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野性の森『仲間づくりプログラム』体験ルポ

  • 野性の森『仲間づくりプログラム』
  • 水津真委さん

    スポーツ統括課 水津真委さん

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「うしろに気をつけて!」―。 本学の卒業生で現在はスポーツ統括課職員としてASE活動の指導にあたっている水津真委さんの声にはっとした。 自分の足元をみると、シューズのかかとがふれそうな場所にブロックがあった。「だいじゅんの向かいにいる人はブロックが見えていたでしょ。 自分の安全は自分自身で、仲間の安全は仲間同士で声をかけあって守れるようになりましょう」
そんな言葉を受け取って、 僕たち城島ゼミ3年次生の仲間づくりプログラムへの挑戦が始まった。

意見をぶつけ合い、仲間のことを思う心がチームの力に。
酷暑の中、3つのイニシアティブゲームに挑戦

本学の敷地内にある野性の森にゼミのメンバーのうち7人が集まったのは、6月24日の2限目だった。自然の中でさまざまな「イニシアティブゲーム」を体験し、みんなでアイデアを出しながら課題解決していくことが目的である。
強い日差しが照りつけるなか、まずはメンバー全員がそれぞれのニックネームを書き込んだガムテープを着ていた短パンやジャージの太ももの部分にはりつけた。水津さんのニックネームは「すいすい」。苗字からそう呼ばれているのかと思ったけど、水津さんいわく「泳ぎが得意ですいすい泳げるから」そんなニックネームがついたらしい。
最初に挑戦したのは「スタンドアップ」。その名のとおり、メンバー全員が地面にお尻をつけた状態から両手をつなぎあって立ち上がるゲームだけど、最初はうまくできなかった。ゼミ仲間といっても、まだ顔をあわせたばかりで一人一人の性格はもちろん、自分との相性もわからない。でも、柔道経験者の影山拓巳君がうまく立ち上がれなかったとき、きれいな受け身をとって笑いをとったのをきっかけに、みんながきれいに立ち上がるためのいろんなアイデアを口にするようになった。「もっと広がってやってみよう」「きれいな円にならなくてもいいんじゃないか」「腕を交差させたほうがいいかも」結局、10分ほどの挑戦で7人全員が一つになってきれいに立ち上がれた。
なんだか、悪くない達成感…。でも、まだまだこれはウオーミングアップみたいなものだった。

「仲間のことを考えること、支えあうことが大事なんだよ」
続いて全員が丸太の上にのって、丸太から落ちないように指示とおりの順番に並び替わる「ラインナップ」というゲームに挑戦した。最初はランダムな順番で丸太の上へ。すると、水津さんから「今から生年月日の順番に並んで」という指示が出た。丸太についていいのは、足の裏だけ。落ちたら、全員が元の場所に戻って最初からやりなおしだ。順番を入れ替わるとき、隣にいる人がかがんだり、さらにその隣の人が手をつないでバランスを崩さないようにサポートしなければいけない。みんなスポーツ大の学生だから体幹がしっかりしていてすぐにクリアできると思っていたけど、一人が途中で落ちてしまった。すると、水津さんが声をかけたのは落ちたメンバーではなく、その隣にいたメンバーだった。「そこの人、どうしてた?」「順番を確認していました」「他人事と思っていたらだめだよ。仲間のことを考えること、支えあうことが大事なんだよ」
結局、生年月日の順番に並ぶのに9分かかった。

コミュニケーションと役割分担の重要性
この日体験したゲームのなかで最も印象に残っているのは「斜めウォール」である。少し角度のついた高さ4メートルの壁を全員が乗り越えて向こう側の台に立つというなかなか難しいゲームである。
最初の2つのゲームはみんなの意見がうまくまとめられず、課題解決するのに時間がかかっていたが、このゲームではみんなが打ち解け、コミュニケーションをとりながら様々なアイデアが飛び出した。
まずは、助走で勢いをつけて登ってはいけない一という条件のなか、一人目がどうやって壁を登りきるか、みんなで考えた。
最終的にまとまったのは、2人のメンバーが肩車をして二段の土台を作り、その上に僕が乗って一気におしあげてもらうというアイデアだった。
土台になってくれたのは、影山君と、古川隼也君。僕が2人の上に乗ると、みんなから「せーのっ」というかけ声がかかる。その声にあわせて土台の2人が立ち上がると、僕の体がふわっと浮き上がった。自分の全体重が下の2人にかかっていることをスニーカー越しに感じながら、目いっぱい手を伸ばす。何とかてっぺんに指がかかる。最後は懸垂の要領で私が最初に「斜めウオール」を登りきることが出来た。
そこからは同じ要領で肩車の上に人が乗って、立ち上がったところで上にいる僕が目いっぱい手を伸ばし、上に引っぱりあげるという形で順調に壁を登っていく。それぞれの体格や体力を考えながら順番もみんなで相談しながら決めたおかげで、たった1人の女子として頑張る、武部莉子さんもしっかりサポートできた。 最後の残った2人をどうするのかといったところで1度つまずきかけたが、身体能力が高い野球部の砂原孝紀君を同じ要領で上にひっぱりあげると、最後は砂原君の足にしがみつく形で上にあがってきた古川君を台の上から影山君が力技でひっぱりあげて全員が高い壁を登りきることができた。
水津さんの問いかけに答えるかたちで、メンバーが想いを共有した。
「土台になる人や引き上げる人、みんなが役割分担すれば困難な課題も克服できることがわかった」(高屋憲史君)
「力だけじゃなく、頭を使わないとあかんことを理解しました」
(下村秀太君)
「みんなで意見が出し合えたのでよかった」(武部さん)
「ひとりじゃ生きていけないことがわかりました」(影山君)
「作戦がよくて思ったよりスムーズにいった」(砂原君)
「はじめてにしてはうまくいった。なぜ、スムーズにいったのか、しっかりと理由を考えたい」(古川君)

仲間づくりは、これからの人生に役立っていく
今回の仲間づくりプログラムを通して僕が感じたことは、思った意見を仲間に伝える勇気や、仲間の意見を取り入れることの大切さだ。困難な課題をクリアするには自分のことだけでなく、仲間のことも考えなければならない。このことはスポーツ活動や社会にでてからも大事なことである。体格もパワーも技術も違うメンバーが意見を出し合い、チームで共有し課題を1つずつ潰していく。それが出来るチームは強いチームになれるのではないか。これからの自分の人生に役立てたいと思うし、今回このような貴重な体験をさせて頂いた水津さんに心から感謝したい。
(文責・鈴木大惇)