関西の大学陸上界に衝撃が!!
第96回関西学生陸上競技対校選手権大会(関西インカレ)が4月中旬から大阪、京都、奈良の各地で行われ、びわこ成蹊スポーツ大学陸上競技部は、歴代最高得点(87・03点)と歴代最高順位(関学、立命、同志社、大体に次ぐ5位)を勝ち取る躍進ぶりを見せた。個人競技のイメージが強い陸上競技だが、本学の陸上競技部は177人の部員が一つになって各種目の出場選手たちをサポート。他校の予想を大きく上回る躍進ぶりを披露し、関西の大学陸上界に大きなセンセーションを巻き起こした。
チームのみんなに楽しんでもらえるようなレースを
大会最終日となった5月19日、奈良の鴻ノ池陸上競技場で行われた男子10000㍍競歩に出場した主将の塩屋陸(4年次生)は先頭でゴールテープを切った瞬間、仲間が声援を送るスタンドに向けて高く拳を突き上げた。
「チームのみんなに楽しんでもらえるようなレースをして優勝したい」
大会前にそう口にしていた主将は序盤からレースを先頭集団でひっぱり、その宣言どおりに初の関西インカレ優勝(41‘37“46)の悲願を果たした。
昨年、主将に選ばれたときに「関西インカレ歴代最高成績を残す」という目標を掲げたが、見事に有言実行を果たすことになった。
1年間チームをまとめ上げてきた主将は「こんな僕についてきてくれて、一緒に戦ってくれたみんなに本当に感謝しています。最高の関西インカレを戦わせてくれてありがとうございました」とチームメイトに感謝の気持ちを伝えた。
飛躍の予感は、大会序盤からあった。
初陣となった4月18日のロードの部(ヤンマーフィールド長居付設)で、宮㟢勇樹(3年次生)がハーフマラソンに出場し、見事3位入賞(1時間07分29秒)を果たしたのだ。予想をはるかに上回る形で21・0975kmを走り切った宮㟢は「目標は3番以内だったが運良く入賞できた。自分のペースで走ることができたのが大きかった」。ここ数年、本学からの出場者がいなかった種目だけに、チームを勇気づける力走だった。
そして一層大きな存在感を示したのが、混成パート(男子十種競技、女子七種競技を専門とするパート)である。
「びわこの混成は、堂々と胸をはれるパートになった」
学生最後の関西インカレで個人2位(7167点)、混成の部総合優勝で終えた黒田貴稔(大学院2年次生)の達成感に満ちあふれた言葉には、さまざまな思いが込められていたはずである。
5年前に黒田が入学したとき、十種競技を専門とする選手は彼だけだった。1人でメニューを決め、1人で練習する日々を過ごすしかなかったのだ。本学に混成パートが誕生したのは、黒田が3年次生になり、藤林献明監督が就任したときに3人の後輩が入部してからである。それから毎年人数は増え続け、今では14人にまで増えた。黒田は「これからもっとびわこの混成が盛り上がってくれることを期待しています」と、後輩たちにエールを送ることも忘れなかった。
創部17年目の躍進に、長年陸上競技部を指導してきた渋谷俊浩部長は「学生スタッフ中心とした最上級生の頑張りと、それに応えた下級生たちの頑張り、そしてチームとしての結束力がこういった結果に結びついたと思う」と、学生たちのチームワークを高く評価。そしてそうしたチームの結束を高める起爆剤となったのは、間違いなく男子200メートルで5位入賞を果たした吉岡寛暁(4年次生)である。
ここ1年で急激に成長し、前哨戦とも言える京都インカレでは、関西学生歴代2位となる20・70(+1・4)をマーク。関西の大学陸上界に一気にその名が知れ渡った。
エントリー時点での200メートルランキングは堂々の1位。だが、大きな試合で3本以上のレースを走るのは今大会が初めてである。前半戦2日間で100メートル6位入賞。400メートルリレーは第2走者として滋賀県記録を大きく更新し6位入賞に貢献の大活躍。そして、後半戦の200メートル。準決勝で自身2度目の20秒台を叩き出し、決勝はこれまでの経験を大きく超えた8本目のレースになった。かってない疲労感と向かい風5・9メートルの強風が吹き荒れるなか、残された力を振り絞っての力走も結果は5位。
ゴール後、トラックに膝をつき十数秒立ち上がることができなかった吉岡。その後、滅多に見せない涙を浮かべながら戦ったライバルたちと握手で健闘を称え合い、応援団に頭を下げる姿は、チームに感動と勇気を与えてくれた。彼からバトンを託される後輩たちの目にも強く焼きついたはずである。
関西インカレのあとも、本学陸上競技部の活躍は続き、日本選手権混成では黒田が十種競技で8位入賞と健闘すると、日本学生個人選手権では男子三段跳の楠本政明(3年次生)が4位入賞、女子三段跳の梅津彩香(2年次生)が優勝、10000㍍競歩の塩屋陸(4年次生)が5位入賞、女子10000㍍競歩の志々田朝稀(2年次生)が8位入賞を果たした。
ここ一番の勝負の時の1cm、1mm、1秒、0.1秒を勝ちきれるかどうか
明らかにこれまでとは違うステージに立った感のある陸上競技部だが、藤林献明監督は「ここ一番の勝負の時の1cm、1mm、1秒、0・1秒を勝ちきれるかどうか。そこにまだ少し課題がある。そのことを考えた時、普段の練習の取り組み方や競技場の使い方といった部分が重要になってくる。本当の意味の楽しさを共有できる雰囲気をチーム全体でつくりながら、そういった1cm、1秒を勝ち切るための取り組みを1年間やってほしい」と、新たな課題について言及。
2017年から本学での指導を始めた石井田茂夫総監督は「びわスポの部員はすごいと思う。関西インカレでは、事前ミーティングでの戦略が生きるように、選手・サポート・応援・役員それぞれのグループがしっかり役割を果たすだけでなく、臨機応変に対応する場面が随所にみられた。
きちんとみんなで話し合い、基礎から振り返っていいチーム作りをして、力を合わせてやった結果が形になった。すべての部員にいろんな可能性がある。来年に向けてまた新しい学生スタッフ体制になるが、部員たちがどの立場においても自らがしっかり考えて、意見を出し合えるように引き続きサポートしていきたい」と話している。
(文と写真/難波隆輝・3年次生)