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withコロナ座談会 大学スポーツ 新時代へ

  • 入口学長

    入口学長

  • 入口学長

    硬式野球部代表 上田 虎太郎
    近江兄弟社高等学校出身

  • 入口学長

    女子バレーボール部代表 津田 くるみ
    京都府立京都すばる高等学校出身

  • 入口学長

    陸上競技部代表 荒木 貴弘
    太成学院大学高等学校出身

びわスポ版NCAA 学友会競技スポーツ委員会
- Gakuyukai Athletic Committee -

新型コロナウイルスの感染拡大は、大学スポーツ界にも大きな影響を与えた。本学の運動部に所属する学生アスリートたちも思うような活動ができず、自らが打ち込むスポーツの存在意義について自問したに違いない。本学の部活動同士で横の繋がりを持ち、互いに切磋琢磨し合える環境つくりをめざして創設されたGACの初代メンバーたちも、思うような活動ができないまま時を過ごした。大学スポーツ界の変革をめざしていく〝びわスポ版NCAA〟は今後もコロナと向き合いながら、どのような取り組みにチャレンジしていくべきなのか。GAC構想の発案者でもある入口豊学長と、GACの代表メンバー3人がそれぞれの意見を交換した。(聞き手・木村友哉)

個々の取り組みに横串を刺すことで、
大学としての一体感がうまれる

入口学長、まず本学内で結成されたGACという組織について教えてください。
入口学長 
「GACは学友会競技スポーツ委員会(Gakuyukai Athletic Committee)の略称です。みなさんも、アメリカの大学スポーツをまとめるNCAAという組織のことを聞いたことがあると思います。日本語にすると、全米大学体育協会、全米の1200以上の大学が加盟しています。そのNCAAについて論文を発表したこともある私は、ずっと以前から日本でも同じような大学スポーツを統括する組織を作るべきだと提言してきました。ようやく日本でも日本版NCAAともいえるUNIVASという組織が発足しました。現時点で本学を含む197大学、31競技団体が加盟しています。そうした状況のなか、まず本学内で運動部間の横のつながりを作っていこうという狙いでGACを発足させました」

あたり前にできていたことができなくなったとき、
競技に向き合う姿勢が問われている気がした。

発足一年目に新型コロナウイルスの感染拡大で、思い通りの活動ができなかったと思います。集まっていただいたGACのリーダーはそれぞれどんな思いでいましたか。
上田虎太郎(硬式野球部代表)
「集まったメンバーをみて、いろんな部活からリーダーシップがとれるメンバーがそろったと思っていましたが、最初の一年で宿題をいっぱい残してしまったという思いがあります」
荒木貴弘(陸上競技部代表)
「GACが発足してすぐ、みんなで何から取り組むべきか相談して、オリンピックに出場した選手にどうやってオリンピアンとしての土台を築いたのか聞いてみるのはどうか、という話は出ました」
津田くるみ(女子バレーボール部代表)
「そうでしたね。その候補の1人として競泳の元オリンピック選手で、現在はキャスターとして活躍されている寺川綾さんに講演してもらうのはどうかなって提案も出ていました。でも、コロナウイルスの感染拡大でうまく前に進めることができませんでした」
入口学長  「本当にこの1年はコロナウイルスの影響で、みんな大変な思いをしたでしょう。それぞれの部活でどんなことを感じましたか」
荒木  「ああいった状況のなかで一人ひとりの陸上部員が自分でできることに精一杯チャレンジしたと思います。たとえば一人でトレーニングしている様子をインスタグラムで共有してお互いのモチベーションを高めたりしていました。改めて自分がスポーツを好きなことを実感する期間でもありました」
津田  「当たり前にできていたことができなくなったとき、競技に向き合う姿勢が問われている気がしました。私はキャプテンをしていたので、普段よりも部員と向き合う時間を増やしました」
上田  「オンラインで他の部員たちと一緒にトレーニングをしたり、自宅で個人練習を行っていました。母校に足を運んで後輩を指導したり、ゴルフを始めたりもしました。チームメイトと関わる期間は少なかったけど、自分と向き合うことができて、野球選手としての自覚を持てたと思います」

秋のリーグ戦を最後まで終えることが出来たので
関係者の人たちに感謝したい。

コロナによる自粛期間が終わって部活動を再開したあと、以前と比べてどんな変化がありましたか。
津田  「今までは一つの体育館を男子と女子で分かれて1コート使っていましたが、コロナの影響で人数制限の関係で2コート使えるようになりました。ただ、リーグが開催されるかわからない状況だったのでモチベーションの維持が難しかったですね」
上田  「硬式野球の場合、秋のリーグ戦は行われましたが、これまでと違って勝率での順位決めで日程が短くなってしまいました。でも、最後まで終えることが出来たので関係者の人たちに感謝したいですね」
荒木  「違うパートの選手たちとのコミュニケーションが深まったような気がします。それが関西インカレでの総合3位、フィールド優勝という過去最高の結果につながったのかもしれません」
入口学長 「満足に活動できないなか、それぞれの部活で工夫をして競技に取り組んでいたのですね。情報交換を含め、そうした個々の部活動の取り組みに横串を刺すことで大学としての一体感がうまれ、うちの大学の新たな財産にしていけないか。そんな思いこそが、GACを発足させた目的の一つです」

近い競技場でリーグ戦を戦っていた野球部とサッカー部が
互いの試合で応援し合ったシーンに感動した。

部活間の横のつながりが生まれることで、どんな効果が期待されますか。
入口学長  「本学の学長に就任して感動したことが、たまたま近い競技場でリーグ戦を戦っていた野球部とサッカー部が互いの試合で応援し合ったシーンでした。一度、応援デーと銘打って、同じ日に甲賀で開催されたサッカーと硬式野球のリーグ戦をうちの教職員みんなで応援しようというイベントを企画したことがあります。午前中に野球を応援して午後からサッカーを応援したのですが、本当に楽しく充実した一日でした。そうした取り組みを他の部活にも広げていくことができれば、さきほども言ったスポーツ大学としての一体感が生まれてくると思っています」

今年は関西インカレも無観客、
応援してくれる仲間のありがたさを痛感した。

応援デーに関しては、ゼミで指導していただいている城島先生もよく話題にされています。最高に楽しい一日で、夜にはサッカー部の望月先生たちと堅田で一緒に食事をしてそこでもいろんな話で盛り上がったそうです。
津田  「確かにそうした取り組みがバスケットや他の部活にも広がれば、これまでとは違う、大学への愛着心がうまれるかもしれませんね。実は先日、リーグ戦が本学の体育館であったのですが、他の部活の人たちが応援してくれてすごく力になった経験をしたばかりです」
荒木  「今年は関西インカレも無観客でしたし、応援してくれる仲間のありがたさを痛感しました。そうした部を横断した応援があれば、選手たちにはすごくプラスになると思います」

GACの活動が、本学の学生ファーストの実現につながっていく
僕は上田先輩と同じ硬式野球部ですが、横のつながりという意味では、他の部活が取り組んでいるトレーニングメニューにも興味があります。
入口学長  「それもいい視点だと思います。例えば野球部やサッカー部が、足を速くする目的で陸上部の選手に走り方を教えてもらうというような関係性を持つこともできるでしょう。とにかく学生たちが主体となって、新しい動きを作っていってほしい」
上田  「学生主体という視点から個人的な意見を言わせていただくと、現在、部活動の停止が決まりましたが、一方で対面授業は続いています。感染リスクを考えると、対面授業のほうが高いのではないか。対面授業を続けるのなら、部活動も工夫して継続する道はあるのではないか、とも考えます」
入口学長 「そうした現場の声をもっと私たちに届けてもらうためにも、GACの活動が活発になればと思っています。上田君の問題提起に対して、他の部のリーダーたちからもさまざまな意見が集まってくる。GACがそうした機能を持つ組織になれば、本学が掲げる学生ファーストの実現につながっていくと思います。
このなかで女性は津田さんだけですが、私はもっと多くの女子学生に本学で学んでほしいと思っています。今は女性の数が少ないのですが、そのあたり、津田さんが思うことはありますか?」
津田  「そうですね。女性が少ないことはみんな顔見知りで仲良くなるメリットはあるんですが、部活を中心にして考えると、部活のメンバーと授業やそのほかの活動でも顔をあわせることが多いんです。それも決して悪いことではないんですが、例えば部活でちょっとしたことが理由で人間関係がこじれてしまった時、そこから解放される空間が学内にないんです。もっともっと女子学生の数が増えれば、部活動は部活動、授業は授業でそれぞれ違う友達と親しくなって視野が広がるかな、と思うことがありますね」
入口学長  「なるほど、確かにそういう側面もあるでしょうね。最近はサッカーやハンドボールで女子ががんばっていますし、もっと女子学生の数を増やせるように努力したいと思います。そのために必要なアイデアを津田さんをはじめ、いろんな学生から提案してほしいし、その拠点にGACがなってほしい。みなさんの意見やアイデアが未来のびわスポ大を創っていく。そんな意識をGACを通じて本学の全学生に浸透させていければいいですね」

最後に、GACが今後最優先して取り組むべき課題について学長が考えてらっしゃることはありますか。
入口学長  「GACが主導して具体的に進めてほしいと考えていることはあります。大学サッカー界の取り組みとして、競技レベルの違いによってそれぞれがプレーをする舞台が整えられています。トップチームの選手でなくても、それぞれのカテゴリーで他大学やクラブチームと戦う舞台があるのです。このノウハウを他の部も参考にできないでしょうか。例えば、硬式野球部もリーグ戦のベンチに入れるメンバーはほんの一握りです。トップチームでプレーできない選手たちで、新たなリーグを作れば多くの選手が試合出場の経験を積むことができます。サッカーが実現しているのですから、決して高いハードルではないはずです」

その構想にすごく興味があります。来年度はGACのリーダーに立候補したいと思います。
入口学長  「木村君はスポーツビジネスコースの学生だから、新しいリーグの事務局をコースのなかに作ってもいい。大切なことは、みなさんのような学生が新しい大学スポーツの在り方を自分たちで考え、提案し、形にしていくこと。GACの活動を軸に、びわこからそうした動きを広げていきたいと思っているので一緒にがんばっていきましょう」(完)