「1部のコートでも、びわスポ大らしく楽しんでプレーしたい」―。2003年の創部以来、初の関西学生リーグ1部昇格を決めた男子バレーボール部の選手たちは、先輩たちが夢見た舞台でさらなる飛躍を誓っている。監督の役割を含め、学生たちがすべてのチームマネジメントを担ってきた異色のチームは、1部の強豪校にどんな戦いを挑んでいくのだろうか。
秋季リーグ最終節 対関西福祉大戦
「あと15点。あと15点とれば、俺たちがヒーローになれるぞ」
昨年10月に開催された秋季リーグ最終節の対関西福祉大戦。勝てば2部優勝と1部昇格が決まる大一番が最終第5セットにもつれこんだ時、キャプテンで監督を務めた岩切大知(当時4年次生)は、そんな言葉をかけてメンバーたちをコートに送り出した。「今まではあと一歩のところで1部昇格を逃してきました。そのあと一歩の壁を打ち破るために、いろんな試行錯誤を重ねながら、チームを作ってきたんです」
リーグの最優秀監督賞を受賞し、4月から滋賀県警で勤務する岩切がそう振り返るように、1部昇格はチームにとっての悲願だった。岩切やセッターの幸聖也、リベロの足立龍ら当時の4年次生たちは、今とはリーグ昇格の規定が違った2年前、2部リーグを全勝で制覇しながら、1部との入れ替え戦で敗れた辛酸も味わっている。結果的に15対4で最終セットを制したびわスポ大は2部リーグ優勝と同時に悲願の1部昇格を決めたのだが、それまでの道のりは平坦ではなかった。「選手としてコートに立ちたい未練もありましたが、それは監督としての責任からどこかで逃れたい意識があったからかもしれません。リーダーである僕がしっかりとしたビジョンを持って練習メニューを考え、メンバーを選ぶことができているのか。常に自問自答する日々が続きました」
岩切が向き合った学生監督としての苦悩は、そのままチーム成績に反映された。能力の高い1年次生を起用して臨んだ春季リーグは優勝を期待されながら、5位に沈んだ。「僕たちの世代にとって最後のチャンスになる秋リーグに向け、チームに求めるべき大きなポイントが2つありました」と、岩切は言う。
一つはチームの主力として抜擢した1年次生たちの成長、そしてもう一つがスピードの強化である。「1年次生にはチームを代表して14人のメンバーに入ることの意味をしっかりと伝えました。スピードに関しては、身長が低い僕たちのチームにとってはまさに〝生命線〟です。プレーのスピードはもちろん、判断の速さも求めました」
そして迎えた秋季リーグ。びわスポ大は序盤の神戸学院大戦で苦杯をなめたが、岩切はこの時、チームの成長を感じたという。「負けても下を向かず、みんながすぐ前を向いて一つになれたんです。1部に昇格するのに必要なメンタルがチームに浸透してきているのを実感しました」
さらに幸と足立が「春は僕らが1年次生に配慮しすぎた部分もあったけど、秋は1年次生が成長してくれたので僕らも思いきってプレーができた」と口をそろえたように、岩切は1年次生を含めた下級生の能力をチームにしっかりと適応させることに成功した。冒頭で紹介した最終第5セットが始まる前、岩切は緊張で表情を固くする1年次生たちにこう言うのも忘れなかった。「15点獲れば終わるんだから、楽しんでこいよ」と。
初の1部リーグに挑むチームは、4月から新たに指導者を迎える。夢舞台での新たな一歩を歓喜で綴ることは容易ではないが、どんな試練と向き合うことになっても、彼らが未知のコートで経験するすべてのことが、びわスポ大バレーボール部の新たな歴史になる。岩切から今季のキャプテンに指命された新4年次生の岩永大一は「1部のレベルの高さをリアルには想像できませんが、必死で食らいついていきます」と抱負を語り、昨年度に引き続いてエースとしての活躍が期待される新4年次生の佐藤奨馬は「高い壁が立ちはだかるイメージしかわいてきません」と苦笑したあと、こう言葉をつないだ。
「当然、今までよりも厳しい姿勢でバレーボールと向き合わないと太刀打ちできないと思います。でも、バレーを楽しむ感覚だけは失いたくありません。楽しくなければ、このチームでバレーをやる意味がないと思っていますから。」
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