本学が社会連携の一環として取り組んだ「運動・スポーツ習慣化促進事業」の研究成果が、2編の学術論文として受理・掲載されました。本事業は、滋賀県がスポーツ庁の助成を受けて実施した「令和5年度 地方スポーツ振興費補助金(スポーツによる地域活性化推進事業「運動・スポーツ習慣化促進事業」)」の一環として行われたものです。
本学は2023年度、滋賀県大津市に所在する素材メーカーと連携し、同社従業員を対象に、「昼休みの短時間運動プログラム」を提供しました。本研究では、この職域における運動介入が、ワーク・エンゲージメントや身体機能の及ぼす影響について検証しました。
■論文①
【論文情報】
タイトル
企業における自体重トレーニングを活用した運動プログラムが従業員のワーク・エンゲイジメントに及ぼす効果
著者
入谷 智子、渡邊 裕也、中山 亮、坂本 和大、禰屋 光男、佐藤 馨
キーワード
健康経営・職域、筋力トレーニング、ストレスマネジメント
掲載雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究.2026, 15(2), 73-80
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【研究概要】
本研究は、滋賀県内の事業所に勤務する従業員84名を対象に、企業内で実施可能な短時間の運動プログラムが、勤労者のワーク・エンゲイジメント(活力・熱意・没頭)に及ぼす効果を検討したものです。
運動プログラムは、自体重で行う筋力トレーニングで構成し、昼休み時間に1回15分、週3回、全32回としました。ワーク・エンゲイジメント(活力・熱意・没頭)は、Webアンケート調査で評価しました。参加率の中央値(56.25%)を基準に、対象者を高参加群と低参加群に分類し、運動プログラムの効果を検討しました。
【主な結果】
・参加率が高い従業員では、「活力」が有意に向上しました。
・一方で参加率が低い従業員では、「総合」「熱意」「没頭」が介入後に有意に低下しました。
・運動プログラムに十分参加できなかった場合、ワーク・エンゲイジメントが低化する可能性が示唆されました。
これらの結果から、運動プログラムがワーク・エンゲイジメントに及ぼす効果は、参加状況によって異なり、継続的に参加しやすい環境や仕組みづくりが重要であることが示唆されました。
■論文②
【論文情報】
タイトル
職域における短時間運動介入後の身体機能,身体組成,身体活動量の変化:単群試験
著者
渡邊裕也、入谷智子、神原宏紀、坂本和大、佐藤馨、中山亮、禰屋光男
キーワード
健康増進、筋力トレーニング、職場健康づくり、行動変容、労働者
掲載雑誌
「健康支援」(受理済・掲載予定)
【研究概要】
本研究では、働き盛りの世代における運動機会の不足という課題に着目し、職場の昼休み時間を活用した短時間の運動プログラムの有効性を検討しました。滋賀県内の企業に勤務する従業員85名を対象に、1回15分、週3回、12週間の運動介入を実施し、介入前後で身体機能、身体組成(体脂肪率および筋肉量)、身体活動量(歩数、座位時間)の変化を評価しました。
【主な結果】
・12週間の運動プログラムの実施により、下肢筋機能の指標である30秒椅子立ち上がり回数は25.1 ± 6.0回から31.0 ± 5.0回へと増加しました。
・身体組成では、体脂肪率がやや増加した一方で、筋肉量には変化が認められませんでした。
・身体活動量については、平日の歩数および座位時間に変化は認められませんでしたが、休日における歩数が5,846 ± 3,295歩から7,232 ± 4,472歩へと増加し、座位時間が581 ± 138分から542 ± 162分へと減少しました。
本研究の結果から、職場における短時間の運動プログラムであっても、勤労者の身体機能や生活行動に変化をもたらす可能性が示されました。特に、昼休み時間を活用した1回15分程度の運動であっても、下肢筋機能の改善や休日の活動量増加といった効果が確認された点は、忙しい働き世代において実行可能な健康支援のあり方を示す重要な知見といえます。