毎朝20分のオンライン軽体操で、高齢者の歩行能力が7歳若返り！ ―キツイ運動ではなく、低強度のスローエアロビック®でも歩行速度が改善することを証明―

2025.12.11

お知らせ

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渡邊裕也准教授（健康・スポーツ医科学コース）が筆頭著者として参画した研究成果が老年学分野の国際学術誌「BMC Geriatrics」に掲載されました。
■ポイント
〇高齢者に12週間、平日（週5日）の朝に、自宅からオンラインで20分間の軽体操 (スローエアロビックⓇ) 教室に参加してもらいました。その結果、参加者の歩行能力が改善しました
〇教室参加率が94.5％と高く、高齢者でも自宅でWeb会議ツールを使ったオンライン運動教室に無理なく継続的に参加できることを確認しました
〇負担が少なく、安全に楽しく続けられる運動で高齢期の身体機能を維持できる可能性が示されました
■概要
本研究は、渡邊裕也准教授が、公益財団法人明治安田厚生事業団在籍時に実施したもので、高齢者が自宅から参加できるオンライン運動教室の効果を検証しました。対象は東京都八王子市在住の高齢者81名（平均79.5歳）で、12週間にわたり、平日朝20分間の軽体操「スローエアロビック®」を週5日実施するグループと、通常生活を送るグループに分けて比較しました。「スローエアロビック®」は、音楽に合わせて楽しく行う軽運動で、体幹をひねる、胸を開く、体側を伸ばすなど、全身を大きく動かすリズミカルな動作が特徴です。
研究の結果、体操実施グループでは最大歩行速度1）が0.10m/秒改善しました。これは加齢による約7年分の歩行能力低下を取り戻す効果に相当します。「スローエアロビック®」によるリズミカルな全身運動が体幹の柔軟性や歩くときのバランスを高め、歩行速度の向上につながった可能性があります。低強度の運動でも、体幹の柔軟性や姿勢制御、歩行時のバランス能力を高めることで、移動機能の向上につながることが示されました。
参加率は平均94.5％と非常に高く、ICT機器の使用に不安を抱える高齢者でも、適切なサポートがあれば継続的な参加が可能であることが確認されました。
※「スローエアロビック」は公益社団法人日本エアロビック連盟の登録商標です
画像左から「オンライン体操教室の様子」、「自宅から参加している様子」

体操教室前後における最大歩行速度の変化
■著者コメント
本研究は、コロナ禍の影響下で実施されたため、すべての参加者が自宅からオンラインで運動に参加しました。このようなWebベースの運動教室は、高齢者に限らず、身体的・環境的な理由で外出が難しい方々にとっても、有効な選択肢となり得ます。また、軽負荷の筋力トレーニングなどを組み合わせることで、高齢者を含むより多くの人々に運動の効果を広げることが期待されます。
Web環境が整っていれば、運動指導者（インストラクター）が現地に行かなくてもプログラムを提供できるため、指導者側にとっても大きなメリットがあります。今後は、対面形式とオンライン形式を組み合わせた「ハイブリッド型」の運動指導スタイルが、より現実的で持続可能な形として広がっていくのではないかと考えています。
■発表論文
・掲載誌：BMC Geriatrics
・論文タイトル：Effects of frequent, short-duration web-based light-intensity aerobic dance exercise on body composition, physical function, and physical activity in older adults: a randomized controlled trial.
・著者：Yuya Watanabe, Kazuki Hyodo, Daisuke Yamaguchi, Takayuki Noda, Sumiyo Nishida, Aiko Ueno, Yuko Kai, Takashi Arao
・DOI番号：10.1186/s12877-025-06495-3
■用語解説
最大歩行速度：「できるだけ速く」歩く際の速度を指し、転倒リスクとの関連性があるとされています。今回の研究では10メートル歩行テストを実施し、その中間の6メートルを歩く時間をもとに、通常歩行速度と最大歩行速度を測定しました。
公財）明治安田厚生事業団のプレスリリースはこちら

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