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入口豊 学長からのメッセージ

入口 豊 学長

スポーツ新時代ともいうべき今を、
一生懸命生きていってほしい

本学は我が国で初めてスポーツの名をつけた大学として、2003年4月に開学しました。
大阪教育大学の副学長をしていた私が4代目の学長として本学に就任したのは、2017年10月のことです。それまでも本学の歩みについてさまざまな見聞を得てはいましたし、就任後にいろんなことを教職員や学生たちと共有してきましたが、昨年8月に開催された卒業生たちのキャリア交流会で本学が積み重ねてきた歩みの確かさと重みを肌で感じることができました。
一期生を含めた卒業生たちが母校に集まってくれたのですが、それぞれの分野で活躍している卒業生たちの表情を見つめながら、改めて〝びわこプライド〟という言葉を胸に想起しました。琵琶湖と比良山系に囲まれた美しいキャンパスで学んだことが、彼ら彼女たちが社会人として生きる核となっていることを実感できたからです。
開学してからこの17年の間に、スポーツはその専門性をさらに高めていくと同時に、人々の日常に深く入り込むようになりました。大衆化という言葉を使ってもいいかもしれません。スポーツが内包する魅力、可能性をあらゆる角度から学ぶ本学の卒業生や在学生にとっては、まさに学びの成果を発揮する舞台が年々広がり、細分化されているのではないでしょうか。
本学から旅立つ卒業生たちの就職率が100%(2018年度卒業生)に達したのも、そうした背景と無縁ではないと考えています。
さて、この一年のトピックスのなかで特筆すべきことの一つは、本学サッカー部が関西選手権で初優勝を果たしたこと、そして卒業生から同時に5人のJリーガーが誕生したことでしょう。
このBSSCジャーナルの紙面でも紹介されていますが、本学の大ホールで開かれた5人の入団内定記者会見は、素晴らしい内容になりました。望月聡監督が「彼らは主体性、リーダーシップ、向上心が優れているのが共通点。サッカーだけをやっていても先に進めない」と語っていましたが、まさに彼らの4年間の鍛錬、人間としての成長がにじんでくるような記者会見でした。5人全員の名はここではあげませんが、お互いゴールキーパーとして切磋琢磨した田中勘太選手(カターレ富山)、糸原紘史郎選手(ガイナーレ鳥取)の表情とコメントには、ひときわ胸を打つものがありました。なぜ、同学年から2人のキーパーがプロ選手になれたのか。いくつもあったであろう困難な壁を2人が乗り越えてきた理由がわかるような時間と空間でした。
このほか、陸上競技部は関西インカレで過去最高ポイントを獲得しましたし、ともに新しい指導者を招いた女子サッカー部は1部リーグでの戦いを経験し、ハンドボール部も全勝で上部リーグにあがりました。
そして一年前のこの欄にも書かせていただきましたが、本学内にアメリカのNCAA(National Collegiate Athletic Association)的な組織を作る取り組みも着実に進んでいます。まずは学友会の中に競技スポーツ委員会を立ち上げ、硬式野球部の新主将が委員長を、サッカー部と陸上競技部の新主将が副委員長を務めてくれることになりました。こうしたクラブ間の絆をより組織的に、より濃密にしていけるよう今年度からいろんな形で交流を図っていく予定です。 もちろん、運動部の活躍だけではありません。4年間の集大成として取り組んでいる卒業論文ですが、各コースとも優秀な論文がそろったと思います。学内の最優秀賞に輝いた奥田耀君(ビジネスコース、山本達三ゼミ)たちは、京都で開かれた日本スポーツ産業学会冬季学術集会リサーチカンファレンスで早稲田大学や同志社大学の学生たちと同じ舞台で卒論を発表し、奥田君は奨励賞を受賞しました。こうした挑戦の一つひとつも後輩たちに受け継がれ、新たな本学の財産になりうると期待しています。
さて、東京で1964年以来2度目のオリンピックとパラリンピックが開催される2020年ですが、本学でも新カリキュラムを導入することになりました。 コース選択のタイミングを2年次から3年次へと変更し、1・2年次に配当する学部共通科目によって広くスポーツ学を学修し、3年次から所属するコースでより専門性の高い科目を積み上げられるように変更したのです。4年間を通してより深い学びを展開し、自然環境を活かした授業や、スポーツを専門とする本学ならではの学びを通して、社会で活躍できる豊かな人間力を身につける。より広く、深く「スポーツ学」を探求できるようにするのが改編の狙いです。
2度目のオリンピック・パラリンピックを経たあと、この国におけるスポーツの位置づけはさらに大きな変化を遂げていくと思います。新入生を含めた在校生たちはそのプロセスをスポーツ大学の学生として見つめ続け、卒業生たちも本学で学んだ経験を糧にスポーツ新時代ともいうべき今を一生懸命生きていってほしい。
そうしたつながりと積み重ねの結果、決して遠くない未来に〝びわこプライド〟がいろんな形となってこの社会に浸透し、それぞれの分野の発展に貢献している。そんな光景に出会うことができれば、学長としてこれほど嬉しいことはありません。