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巻頭特集 サッカー部(男子)・4年次生 泉柊椰選手 J1ヴィッセル神戸入団会見レポート

  • 森昂大選手
  • 2022年12月1日、本学にて行われた入団会見。
    (左から)本学サッカー部・望月聡監督、泉柊椰選手、ヴィッセル神戸強化部・幸田将和スカウト、本学出身・元ヴィッセル神戸選手・現タレント・近藤岳登氏

  • 森昂大選手
  • 生泉選手
  • 山口マネージャー

    第46回総理大臣杯。創部初の3位入賞のサッカー部(男子)

本学サッカー部で活躍し、2023シーズンからJ1神戸でプレーする4年次生の泉柊椰選手の入団記者会見とトークイベントが2022年12月1日、本学で行われた。「1年目からが勝負。いろんな壁にぶち当たると思うけど、僕なりの乗り越え方で神戸の勝利に貢献したい」。本学出身者として7年連続、22人目のJリーガーとなった泉選手はそんな抱負を語るとともに「4年後のワールドカップをかなり本気で狙っている」とも言及。近い将来、日の丸を背負ってピッチを駆ける姿を想像させた。

泉選手は、大阪府八尾市出身。2016年から18年まで神戸の下部組織であるU―18でプレーしたあと、本学へ。入学直後から身長174cm、体重62kgという痩身ながら緩急をつけたドリブル突破を武器に、MFとしてチームに貢献。3年次には古巣である神戸に特別指定選手として加入が内定すると、4年次には全日本学生選抜、さらにU―23日本代表にも選出されるなど目覚ましい活躍を続けてきた。

この日の会見には、本学サッカー部の望月聡監督、ヴィッセル神戸強化部の幸田将和スカウトも同席。望月監督が「しなやかな動きで突破できる選手なので、ギリギリまで判断を変えられる雰囲気を持っている。周りの環境が変わっても活躍できる選手になってほしい」とその才能を評価すると、幸田スカウトも「緩急をつけ、内からも外からも持ち出せる技術がある。ヴィッセル神戸だけでなく、Jリーグを代表するような選手になってほしい」と期待をよせた。
古巣の神戸に戻ることについて「素直にありがたい」と語った泉選手は、本学で過ごした自身の学生生活を振り返って「決して順風満帆ではなかった」と告白。「周りからはそんな風に見られていなかったかもしれませんが、4年間で何度も壁にぶち当たってきた。でも、そのたびにその壁を乗り越えるにはどうすればいいのか、壁を乗り越えるための考える力がついたと思う」。持ち味のドリブルを強化し、課題とされたフィジカルも鍛えたが、最も成長したのはメンタル面であることを強調した。

突破なら自信がある。突破力で新しい風を吹かせて勝利に導きたい
記者団から現在の神戸のチーム状況について聞かれると、「去年のチームは突破する人がいない印象があった。だからこそ、技術面では他の選手に劣るかもしれないけど、突破なら自信がある。自分の突破力で新しい風を吹かせて勝利に導きたい」。
さらに「Jリーグでそのドリブルは通用すると思うか、どこを磨いていく必要があるのか」という質問に対しては「通用する自信がある。体が細いからフィジカル・スピードをさらに磨いていきたい」と、大学サッカー界屈指のドリブラーとしての自負をのぞかせた。

三苫選手が憧れではなくなるタイミングを作らなきゃいけない
会見が開かれた日はカタールでワールドカップが開催中で、日本代表として同じ左サイドで注目を集めていた三笘薫選手(ブライトン)の存在についても記者から質問がとんだ。目標とする選手として三苫選手の名前をあげてきた泉選手は「三笘選手がボールを持つとワクワクする。僕自身、4年後のW杯をかなり本気で狙っている。今は憧れの存在だけど、どこかで憧れをなくすタイミングを自分で作ることができれば」と、ワールドカップで日本中をわかせたヒーローの背中に、自らの未来図を重ねた。

「ファンを大切に」本学第一号Jリーガーからのアドバイス
会見のあと、続けて開催されたトークショーには、本学初のJリーガーで現在はお笑いタレントとして活躍している元神戸の近藤岳登氏がゲストで登場。「ファン感謝祭を一番頑張れ。翌年の契約はある程度そこで決まる。ファンを大事に、人間として愛される選手になってほしい」と、後輩に一風変わったエールを送ると、記者会見のどこか堅苦しかった雰囲気が一変した。
スカウトになってまもない駆け出し時代に近藤氏に声をかけたという幸田スカウトも、近藤氏のどんなプレーに才能を感じたのか―という問いかけに「関西選抜の合宿で披露した一発芸が印象的でした」と返答。それを受けて近藤氏は神戸のファン感謝デーで大好きな長渕剛さんの曲を弾き語りで披露したことも打ち明けた。
ユーモアにあふれたやりとりのなかでも、Jリーガーの先輩として近藤氏は「現役時代は俺が決めてやるという思いで、常に100パーセントの力をだそうとピッチに立っていた。でも、一流の選手をよく見ていると、常に100パーセントの力でプレーしているわけじゃない。自分の全力をそこで出し尽くすというより、目の前の相手よりちょっと早く走る。そんな意識を持ってプレーすることが大切」と、母校の後輩に真面目なアドバイス。
泉選手も「去年から一緒に練習しているイニエスタ選手なんかは、常に力を抜いている感覚が伝わってきます」と、納得した表情でうなずいていた。

トークショーの舞台には、近藤さんら一期生たちがプレーしていた時代の本学サッカー部のユニフォームが現在のユニフォームと並べて展示されており、1人目と22人目のJリーガーの〝共演〟は、本学サッカー部が積み上げてきた歴史にふれる機会にもなった。

後輩たちには「負けず嫌いでいてほしい」
2022年度の本学サッカー部は、悲願の「日本一」を達成すべく、様々な分野のスペシャリストの協力のもとで〝日本一プロジェクト〟を始動。3大会連続5回目の出場となった総理大臣杯では、創部初のベスト4に進出した。
関西学生リーグにおいては、1年間を通して上位4校が出場できるインカレの出場権争いが後期最終節までもつれ込む大接戦に。最終節は今年度は2度も6失点での大敗を喫した関西大学との試合となったが、泉選手がドリブルで切り込んでからのラストパスで決勝点を演出、2―1で勝利を収め、リーグ戦2位でインカレの出場権を手にした。
インカレは2回戦敗退という結果で終わったが、泉選手はこの日の会見で日本一への夢を託すことになった後輩たちに「常に負けず嫌いであってほしい。トップチームのメンバーから落とされたとき、そのまま気持ちが沈んでしまう選手もいるけど、どんな状況に追い込まれても気持ちで負けないことが大切」と、エールを送った。
(取材/執筆・戸田菜月、古川隼也、神内椎稀)